かやの実会について

かや【榧】とは

Torreya nucifera
イチイ科カヤ属 常緑針葉樹

その昔、佐渡島の天狗は
かやの実を食べて神通力を
得ていたそうな…

かや【榧】とは

このような昔話が残る新潟県佐渡市赤泊地区。
かやの木は成木までに約300年かかると言われており、その年輪の綿密さ、柔らかさからかやの木で作られた碁盤は最高級品とされています。実は縄文時代から食用とされ、赤泊港からかやが運ばれた歴史があり、赤泊地区の特産品となっています。
(昭和48年6月「赤泊の木」として指定)

かやの木の特徴

かやの木の特徴

雄の木と雌の木に分かれており、雌の木だけ実を付けます。雄の木は5月に白くて小さな花を咲かせ、その光景はまるで枝に連なるスズランのように可憐です。雌の木は一年かけて実を膨らませ、8月末から10月にかけて収穫期を迎えます。かやの木は一本一本個性があり、その木につける実は、大きさ形、特性、味、模様がすべて異なります。

赤泊とかやの木の歴史

赤泊とかやの木の歴史

赤泊地区には「天狗塚」と呼ばれる小高い山があり、
かつてそこではお酒が好きな天狗たちが住み、
日々修行をしていたという昔話がある…
(佐渡の民話「お神酒天狗」)

赤泊とかやの木の歴史

佐渡島全土を見渡すと、かやの木をところどころで確認することができますが、中でも赤泊地区に密集しているのは、土地の性質が関係しているといわれています。(かやは生息地として石地を好み、昔から赤泊は石地の多い土地柄であったため)その昔は米よりも高値で取引され、かやの木しか生えていない「かやの木山」が存在し、土地の人々で大切に守られていました。しかし、かやの木が木材として重宝されだすと次々に伐採され、多くのかやが島外に運ばれていきました。現在では赤泊の限られた土地に点在するのみとなっています。

赤泊とかやの木の歴史
戦時中とかやの実

戦時中とかやの実


赤泊地区の山寺という土地に「阿弥陀堂」というお堂があります。そのお堂のわきに生えていたかやの木は「阿弥陀ガヤ」と呼ばれており、まるで阿弥陀様の形をしたかやの実を生らせることで知られていました。その阿弥陀ガヤを胸ポケットに入れておくと銃弾に当たらないと信じられており、赤泊から戦地に赴く男性は皆、阿弥陀ガヤを胸ポケットに忍ばせていたといいます。このように、戦時中はお守りとしても使用されていました。

夷木(えびすぎ・えべすぎ)

夷木(えびすぎ・えべすぎ)


赤泊のかやの木のなかでも、特別に名前のついた木がいくつか存在します。そのうちの1つ、赤泊地区の山寺という土地に「夷木」と名付けられた大きな木がありました。夷木はゆうに樹齢1000年を超える巨木であり、その大きさは木の洞に大人が十人は立って入れるほど、そして幹ではなく、枝で碁盤が作れてしまうような、大きくどっしりとした木だったそうな…明治時代、天皇の宮城を建設するために全国各地から献木がなされ、その際に夷木は赤泊を代表する名木として献木されました。現在でも、その切り株が確認できます。

代表者あいさつ

代表者あいさつ

かやの実会 代表
野口 菜々
Nana Noguchi

野口 菜々

新潟県佐渡市赤泊地区出身。
2017年春、地元菓子製造事業であった「かやの実会」の二代目として事業を受け継ぐ。


大学時代、佐渡で就職活動を行うが仕事が限られており、幼馴染は「帰りたいが仕事がないから帰れない」と。
そこで「仕事がないのであれば、作ってしまえばよいのでは」という発想に至る。
その時期に、笠木隆子さん(かやの実会当時代表)と出会い、意気投合。
長期にわたる思案の結果、
「難しい道だからこそ、人生をかける価値がある」
「次世代の若者たちのためにも、地元に新たな職業選択の道を作りたい」という思いから
二代目として事業を受け継ぐことを決意。現在に至っている。

メッセージ

私には夢があります。
それは、かやの実会を「大きなかやの木」のような事業へと成長させ、生まれ故郷を守り、育んでいくことです。

2代目を引き継いでからというもの、かやからは沢山のことを学ばせていただき、多くの方々とのご縁に支えられて、今の私があります。 温かく見守ってくださる皆様、そして応援してくださる皆様へ、感謝の思いを抱き続けると共に、何百年もこの土地を見守ってきてくれた「かやの木」たちと共にお仕事ができることを、心から光栄に思っています。

ご先祖の皆様が守ってきてくれたこの土地を、特産品を、風景を、子々孫々に受け継ぐために。

何代も続く事業に成長させ、私が今持っているバトンを決して離さず、しっかりと、次世代へつなげていきたいと思っています。

そのためにも、自分自身も大きなかやの木となり、しっかりと大地に根を張って、枝葉を広げ(事業展開)、光合成を行い(新たなものを取り入れ、生み出す)、花を咲かせ、たわわな実を実らせて。(自分、従業員の個性や魅力を生かす)

時には訪れる人に土地の魅力や昔話を伝え

時には疲れた人が休める木陰を作り

時には子どもたちが木の周りで遊びまわり

時には美味しそうな実を見つけた鳥たちがやってきて歌を歌う。

日々留まることのない進みゆく現代社会の片隅で、穏やかに、しかし歩みを止めることなく、巡る季節を慈しみ、いつまでもいつまでも、かやの木の周りで人々の笑い声がこだまするような。

そんな故郷をつくり、守り、育むことが、私の夢です。

野口菜々